手術後の痛み(遷延性術後疼痛)
Summary
- 手術後の痛みが3か月以上続いている状態を遷延性術後痛と呼ぶ
- 時間とともに痛みが増強し、範囲が広がることもある
- 適切な治療で改善が期待できる
通常、手術の傷の痛みは術後の回復に伴い良くなっていきます。しかし、なかにはいつまでたっても傷の痛みや不快感が残存し、場合によっては徐々に悪化してくることがあります。このような状態が3か月以上続くものを遷延性術後痛(CPSP:Chronic Post-Surgical Pain)と言い、手術後の20~50%程度の患者さんに発生することが報告されています。
遷延性術後疼痛の特徴は以下の通りです:
- ・灼けるような/刺すような/電撃的な痛み
- ・軽く触っただけでも痛みを感じる(Allodynia:アロディニアと言われます)
- ・痛みの範囲が徐々に拡大する
- ・動かした際に広い範囲にひびくような痛みがある
遷延性術後疼痛は特に胸部の手術では発生率が高く、乳腺手術や肺の手術後に多く見られます。そのほかにも人工関節置換術後、鼠径ヘルニア術後、四肢切断術後、帝王切開術後の発生率が高いことが報告されています。手術後の痛みは「当然のこと」と考えられがちなため、その発生率に比べて見過ごされることが多く、潜在的な患者数は多いとされています。
遷延性術後疼痛の発症メカニズムとして、傷そのものの痛み(侵害受容性疼痛)に加え神経の障害による痛み(神経障害性疼痛)や慢性的な炎症の関与も想定されていますが、まだ完全には判明しておらず、現時点で効果的な治療方法は確立していません。一般的な薬物療法だけではあまり効果がない事が多いため、上記の症状のある方は専門的な治療を受ける必要があります。
当院では神経ブロックを中心に低出力レーザ治療、理学療法、認知行動療法などを組み合わせた治療を行っていきます。特に神経ブロックが有効な場合が多く、複数回の治療で改善を認めるケースがあります。また手術から時間がたつほど回復に時間がかかることが多いので、疑わしい場合は3か月待たずに受診されることをお勧め致します。
手術後の痛みがなかなか改善しない方は、ぜひ一度当院にご相談ください。